殺精子剤をめぐる現状 ①

セックス

殺精子剤(さっせいしざい)については、本サイトでも、「殺精子剤でどうやって避妊するの?」という記事の中で、説明をさせていただきました。

2018年8月9日付で、この記事を更新した際、僕は次のように追記しました。

エンケアとVCFの主成分である、ノノキシノール-9については、安全性への懸念があることは本文中にも書きましたが、その懸念が徐々に強まってきている感じを受けます。そのことが、欠品の背後にあるのでしょうか?

その後、少しずつではありますが、殺精子剤をめぐる状況にも変化が生じています。また、殺精子剤を悪用した、例の中イキ・脳イキ施術者案件があり、改めてこの避妊法について考える必要が出てきたように感じました。

そこで、今回の記事では、僕が入手できる範囲の最新情報をもとに、殺精子剤をめぐる現状について書いてみたいと思います(書きはじめたらかなりの長文になってしまいましたので、2回に分けて掲載することにします)

まず、殺精子剤について、簡単に説明しておきます。殺精子剤とは、「性交の際に膣 (ちつ) 内に入れ、射精された精液中の精子を殺し、妊娠を防ぐ薬剤」です(引用:『ブリタニカ国際大百科事典』) 種類としては、ゼリー、錠剤、フィルム状製剤等があります。

ゼリー以外の錠剤とフィルムについては、女性の膣内に直接投与するもので、ペニスを挿入する10分程前に、女性の膣内の奥、子宮口のところにまで挿入して使うものです。その後、膣内に湧き出てきた愛液で殺精子剤が溶解すると、石鹸の泡のようになった界面活性剤が、精子を包んで呼吸困難にし、受精能力を奪います(詳しくは、こちらの記事をお読みください)

ショック! あのコンドームが生産中止に!!!

ゼリー状の薬剤については、以前はチューブ状のゼリーも売られていて、それを膣内に注入するということもされていたのですが、現在では、ゼリーをコンドームの内側に塗って避妊効果を上げるという使い方をされるのがほとんどです。商品としては、オカモトの「【LOVE DOME】ラブドーム ガールズガード」が、国内では唯一販売されています。

ところが、今回の調査のためにオカモトのウェブサイトにアクセスしてみたところ、商品ページの「ラブドーム」シリーズの中に、「ガールズガード」が掲載されていなかったのです! そこで、お問い合わせ窓口に電話を入れたところ、衝撃の事実が判明しました。

【LOVE DOME】ラブドーム ガールズガードは、すでに生産が中止されており、現在、市場に出回っている商品がなくなり次第、入手が不可能になります。

前身の商品である「エポカ」から、このコンドームを使い続けてきた僕にとっては、ショックなニュースではありましたが、同時に、「ああ、やっぱりそうなのだな」という気持ちにもなりました(その理由については、後述します) お問い合わせ担当さんの説明によると、オカモト側としては生産を希望していたが、殺精子剤(この商品では、メンフェゴールを使用)を供給してきた薬品メーカーが、薬剤の製造自体を中止してしまったので、どうにもならなくなってしまった、とのことでした。

ただし、現在も、オカモトのECサイトでの販売は継続しておりますし、市場にもそれなりの数、商品が供給されているので、「すぐになくなることはないと思われます」という説明でした。それでも、後継商品は作らない(作れない)とのことでしたので、やがて日本からは、殺精子剤を使用したコンドームは、姿を消すことになります。

「ネオサンプーンループ錠」は、どうして姿を消したのか?

「ラブドーム ガールズガード」が生産中止になったのは、商品の先端部分内側に塗られる殺精子剤(メンフェゴール)自体が製造中止になったことが理由ですが、実は、このメンフェゴールを主成分とする避妊用膣錠「ネオサンプーンループ錠」は、すでに2011年3月で製造中止になっています。

「ネオサンプーンループ錠」は、20錠入りで600円程度と廉価で、トローチ状の錠剤も小さく、膣内への挿入も容易で、大変使いやすい殺精子剤だったのですが、最後まで販売を続けていた「楽天」内の某薬局の在庫も切れたようで、現在、購入することは不可能です。

製造中止の理由については、メーカー(エーザイ)の説明によると、「原材料の供給が難しくなったから」ということでしたが、実際には別の原因があったようです。

その原因の一つとして考えられているのが、この薬剤の使い勝手の良さがかえってあだとなり、コンドームの併用なしに、これ単体で避妊を試みるカップルが多く、「ネオサンプーンを使用したのに妊娠してしまった」という報告が、ネットを中心に広まったことがあります。

そもそも、殺精子剤単体の避妊成功率は、正しく使用したとしても、せいぜい75%程度だとされており、約85%の成功率とされるコンドームと比較しても、その数字は低いものです。ですから、殺精子剤だけを使用すること自体、避妊とは到底言えない行為なのですが、こうした「風評被害」が、製造中止の判断に影響を与えた可能性はあり得ると思います。

ですが、実際に、この錠剤の「息の根を止めた」のは、次項で説明する通り、安全性への懸念の声が、国内外で上がったことが理由であったと思われます。

殺精子剤の安全性をめぐる論争

「ネオサンプーンループ錠」は、日本国内では、最後まで製造販売が続けられていた殺精子剤でした。

それ以前には、1999年に、一般社団法人日本家族計画協会(JFPA)から出ていた、ゼリー型殺精子剤(FPゼリー)の販売が中止されました。

この経緯については、協会のウェブサイトに詳しく記載されていますが、ゼリーの成分が体内で代謝されると、ノニルフェノールという「環境ホルモン」になると、ある環境団体から「発売中止の要請と要望書」が届けられたことにあったのが影響したそうです(協会は、この団体について公表していませんが、後述する「マイルーラ」の販売に反対していた団体の一つであることは間違いないでしょう)

その次に、製造が中止されたのが、殺精子剤フィルム「マイルーラ」でした。

「マイルーラ」は1983年5月に発売され、2001年3月に製造中止になっています。

「マイルーラ」の主成分は、メンフェゴールではなく、別の種類の非イオン系界面活性剤(いわゆる、合成洗剤)のひとつである、ノノキシノール-9(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、以下、ノノキシノールと表記)です。

発売当初、製造販売元の大鵬薬品工業は、女性週刊誌で同商品を大々的に宣伝しました。そのことで、女性の側から自主的に避妊に取り組むという意識が構築された点は良かったのですが、薬局等で手軽に入手できることから、使用者の弱年齢化が進み、社会風紀を乱すということで、問題視されるようになりました。

そこに追い打ちをかけたのが、1983年、日本消費者連盟と「薬を監視する国民運動の会」の故・高橋晄正氏が、「マイルーラ」の毒性を調査、告発し、朝日新聞に掲載された記事でした。この2年前に、消炎鎮痛剤「ダニロン」の新薬申請制度での承認を巡り、大問題(いわゆる「ダニロン事件」)を起こしたばかりの大鵬薬品への告発記事でしたので、これもまた社会問題化しました。

告発内容には、焦点が二つありました。一つ目は、「マイルーラ」の避妊効果が低いことを表すデータが存在していたにもかかわらず、大鵬薬品がその事実を隠蔽していたことです。宣伝の中で、会社側は「2.77婦人・年」という数字を掲げていました。婦人・年」とは聞きなれない言葉ですが、「100人の婦人が、「マイルーラ」を1年使用して妊娠する人数」、つまり「失敗率」のことです。ところが、実際には「62人婦人・年」というデータがあったにもかかわらず、会社はそれを公表せず、意図的に「失敗率」の数字を低く算出していました(そのせいで、「マイルーラ」の避妊効果を過信して、コンドームの併用をしないカップルが多くいたといわれています)

二つ目は、「マイルーラ」に強い刺激性があり、膣粘膜に炎症を起こさせる副作用があることへの疑念でした。ウサギを使った実験では、実際に、主成分であるノノキシノールを膣内に滞留させると、炎症が起こることがあることが分かっていました。ですが、大鵬薬品側は、「おりものとともに、自然に排泄されることとなっているので、健康には問題ない」という文章を出して、これを否定しました。ところが、その後の調査により、ほとんどのノノキシノールは、人間の膣から吸収されて体内に残留し(特に、子宮、膣、肝臓で高い残留率が示されました)、なかなか排泄されないことが分かりました。

さらには、ノノキシノールの「発がん性の疑い」「発がんの促進作用」「胎児や乳児にノノキシノールの代謝物が移行して、胎児毒性が生じる可能性」を警告する論文が、外国で発表されていたことも明らかになりました。

告発記事によってこれらの事実を知った、大鵬薬品の労働組合は、会社側に開発の経緯の開示を要求、消費者とともに闘う姿勢を見せたのですが、ダニロン事件のときと同様に、ここから会社側の報復がはじまり、労働組合長を出勤停止処分、懲戒処分としたため、再び裁判で争われることになりました。

この裁判がきっかけとなり、「マイルーラ」問題は、きれいな水といのちを守る全国連絡会や旧・厚生省交渉実行委員会などで取り上げられ、全国組織「マイルーラの毒性を考える会」が結成されましたが、大鵬薬品は、強気の姿勢で販売を中止しませんでした。

ところが、1986年に、アメリカで大事件が発生します。ノノキシノールと同系列の非イオン界面活性剤であるオクトキシノールを使用した母親から、口蓋裂、手の異常、手の欠如、左鎖骨形成不全等を伴った女児が誕生し、家族が薬剤を製造販売をしたオルソ社を告訴。その結果、一審の地方裁判所、二審の連邦裁判所の両法廷で因果関係が認められ、賠償命令が出されました。

さらに、この頃から「環境ホルモン」の問題が浮上してきます。ノノキシノールは、体内で代謝されるとノニルフェノールになる可能性が指摘されたのです。ノニルフェノールは、化学工業製品や農薬に含まれる環境ホルモンで、内分泌攪乱(かくらん)作用があるとされていました。これを受けて、旧・厚生省は、大鵬薬品にノノキシノールの代謝実験を命じることになりました。

こうした要因が重なり、加えて、フィルム状であったために、膣の入口で薬剤が溶けてしまう等の使い勝手の悪さに不満を持つ消費者の声が上がったこともあり、「マイルーラ」の売上は、販売当初の3分の1に落ちこんでしまいました。そのため大鵬薬品は、2001年3月に製造販売の中止を表明しました。ですが、最後まで「安全性に問題があるわけではない」ということは主張し続けました。

 

次回、殺精子剤をめぐる現状 ②につづく

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