「鉄分不足はセックスの満足度を下げるの？」【ケンタロウのお悩み相談室】

以前の質問への回答で、「鉄分不足はセックスの満足度を下げると言われている」と書かれていましたが、これについてもう少し詳しく教えてください。

A.　ケンタロウからの回答

前回の「中イキがしやすくなるような食べものやサプリはありますか？」のご質問をお読みになった女性からのご質問です。

その回答の中で、「日本人女性の多くは鉄分が不足しており、鉄分不足はセックスの満足度を下げると言われているので、鉄分を多く含む食品を摂るか、サプリで補うことを推奨いたします」と書いたのですが、この点について説明不足であったので、こちらで回答いたします。

まず、女性は月経により血液の損失が定期的に起こるため、男性に比べて鉄分不足になりがちです。そして、令和元年（2019年）に行われた、厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、月経のある女性の7人に１人が、鉄分不足が原因だと考えられる「貧血」 状態にあるという結果が出ています。これは、欧米の平均値の4～5倍にあたる数値だということです。 

日本人女性の鉄分不足の背景には、生活スタイルや食生活の変化があると言われています。ダイエット志向が強まり、鉄分を多く含む食品（特に、お肉類）の摂取を控えたり、野菜自体の栄養価が減っているために、ほうれん草のような鉄分が多く含まれるといわれる野菜を食べても、必要な量の鉄分の摂取につながらないということも指摘されています。また、鉄製の調理器具（フライパン等）が減り、テフロン加工されたものやアルミ製のものに置き換えられたことで、器具から食品に流れ出す鉄分が減ったという指摘もあります。

そもそも、鉄分は「努力のミネラル」と呼ばれるほど、身体への吸収率が悪く、必要量の摂取が難しい成分なのです。そのため、欧米では、小麦粉や調味料に鉄分が添加されることもあります（日本では法律で禁止されています）

さて、貧血の中でも、鉄分不足が原因のものを「鉄欠乏性貧血（IDA）」と呼びます。イランで行われたある学術研究で、このタイプの貧血の症状を訴えている女性を含む18～45歳の女性129名を調査し、いくつかの指数を用いてIDAと非IDAの女性の性機能と性的満足度を比較したところ、IDAの女性の数値が非IDAの女性と比べて低いことが判明しました。

残念ながら、この研究ではこうした差異が生じた原因については言及されていないのですが、鉄欠乏性貧血は心身に下記のような影響を与えることが分かっているので、それが性機能と性的満足感の低下につながったと考えられます。

鉄分の不足は、酸素の運び屋さんである赤血球に含まれる、ヘモグロビンの量や質を低下させますが、そうなると身体にうまく酸素が行き届かず、酸欠状態になります。この時、動悸、息切れ、疲れやすさ、頭の重さ等の症状が現れたり、さらに鉄不足が続くと、集中力の低下、活力や免疫機能の低下、うつ、記憶障害等の症状が起こります。

こうした症状を抱えてセックスをしたところで、性機能と性的満足度が高まるはずがなく、やはり鉄分の不足はセックスの満足度を著しく損なうということは言えるのではないでしょうか。

では、鉄分不足をどのように補えば良いかということですが、一番のおススメはサプリです。本当は、食べ物からの摂取の方が良いのでしょうが、上記の理由から、それを行うことはなかなか難しいのが現状です。鉄分サプリについては、「ヘム鉄」、「２価鉄（Fe２＋）」、「アミノ酸キレート鉄」の3種類が存在するのですが、日本で最も一般的なものは、ヘム鉄という、血液中に含まれるヘモグロビンと同じ形をしたタンパク質に包まれた鉄のサプリです。ドラッグストアでも安価で購入出来ますから、とりあえずこれを決められた量飲んでおけば問題ないかと思います。

２価鉄のサプリはほとんど見られませんが、そもそも摂取すると「むかつき」が起こりやすいと言われているので、推奨はしません。アミノ酸キレート鉄は、オーソモレキュラー療法（栄養療法）という療法で推奨されていることもあって人気があるのですが、日本では販売が禁止されているので、海外から個人輸入する必要があります。

以上が、今回のご質問への回答となります。上記の通り、日本人女性は鉄分不足になりやすいので、セックスはもちろんのこと、健康状態を高めるためにも、意識的に摂取を試みてみるのも良いかも知れません。

＊ケンタロウは医師でも薬剤師でも医療従事者でもありません。したがって、上記の回答はあくまでも素人の一意見としてご理解ください。回答内でご紹介させていただいたサプリや食品を摂取については、自己責任でお試しいただきますようにお願いいたします。